タイトルの『春蜜柑(はるみかん)』は、春に咲く蜜柑の花のことで、俳句の季語として使われる言葉なのだそうだ。 　　一般的な会話には出てこないこの言葉。実際つじあやの自身も、図書館の季語辞典や花ことば辞典から見つけた言葉ということだ。しかし、不思議と“春蜜柑”という言葉が持つ季節感、可憐さが違和感なく作品にぴったりとはまっている。 　　つじあやのというと、ウクレレのイメージが先行してしまうのだが、この作品ではむしろアコースティック・ギターの斉藤誠のサウンドが全体を包み込んでいる。それは物足りなさではなく、何かを予感させるもの。“君”と“僕”が多く登場してくる詞の世界は、二人称の親近感があり、ふんわりと春の陽だまりのようなヴォーカルが語りかけてくることで、実に心地よい。独身ヤング・サラリーマンまで、この詞世界の守備範囲だろうか。パパイヤ鈴木の振り付けでCM出演するというイメージ・チェンジがエポック。